インドネシア政府、輸入中古衣料品(古着)のオンライン販売禁止へ
- 公開
- 2025/12/30
- 更新
- 2026/01/01
- この記事は約7分3秒で読めます。
インドネシアでは国内産業保護などの目的で、基本的にあらゆる中古品の輸入販売が禁止されています。
しかし、中古衣料品(古着)の輸入量は増える一方です。伝統的な市場の他、最近ではオンラインで販売する業者が多いことも問題視されてきました。そこで今回インドネシア政府は、「ECでの輸入中古衣料品販売を禁止」という方向性を改めて、かつ強く打ち出しました。
本記事では、「インドネシアの輸入中古衣料品のオンライン販売禁止」の背景や影響について、3月22日のKompas.com「Pemerintah Larang Impor Baju Bekas, Saat “Thrifting” Diadu dengan UMKM(政府が古着の輸入を禁止、スリフティングと中小企業が対峙する時)」と関連記事を参照しながらご紹介します。
インドネシアの輸入中古品販売事情
中古品の輸入販売禁止の背景
インドネシアでは、「中古品の輸入禁止」が貿易大臣規則に記載されています。中古衣料品(古着)の輸入は2015年に禁止されましたが、インドネシアの中央統計庁(BPS)によると、2022年の中古衣料品の輸入量は2015年と比べ623%増加しています。
貿易大臣のZulkifli Hasan氏は、「輸入業者は警官に監視されない違法なルートを通るため、中古衣料品のビジネスを止めるのは難しい」と述べています。
同氏によると、違法に輸入された中古衣料品の玄関口は大都市が集まるジャワ島だけでなく、スマトラ島やスラウェシ島など、複数の島にあります。そのため、貿易省はタスクフォースを結成し、法執行機関と協力して取締まりを強化しています。
一方、経済法研究センター(Celios)所長のBhima Yudhistira氏は、輸入中古衣料品ビジネスを阻止するための政府の対策はまだまだ中途半端だと評価し、「禁止する規制はあるが、オンラインストアでの流通に罰則がないのが実情だ。」と述べています。
さらに同氏は、輸入中古衣料品ビジネスの禁止に関する取締りを現場で確実に実行する必要があると付け加え、「取締りが中途半端である限り、古着需要は依然として高いままだ。国内衣料品メーカーより輸入古着を買った方がいいと考える人もいる。」と説明しました。
- 参考:
Kompas.com「5 Fakta Seputar Larangan Bisnis Pakaian Bekas Impor」
Katadata「Sudah Dilarang Sejak 2015, Impor Baju Bekas Naik 623% pada 2022」
インドネシアの輸入中古衣料品(古着)市場

インドネシアの中央統計庁(BPS)が発表している2013年から2022年までの輸入統計報告書によると、インドネシアは海外から合計870.4トンの中古衣料品(古着)を輸入し、その金額は1,109万米ドル(約14憶7,200万円※)に上ります。中古衣料品は、92か国から輸入されており、中でも多いのは、日本、オーストラリア、インド、台湾などとなっています。
上掲のグラフに示されている通り、中古衣料品の輸入は2017年に急増しました。当時、インドネシアに入った輸入中古衣料品は128.5トンで、2016年の6倍ほどになりました。その後輸入量がピークとなったのは2019年で、総量417.7トン、金額は600万米ドル(約7億9,700万円※)を超えました。
中古衣料品の輸入は2020年から2021年にかけての新型コロナウイルス流行期に一時的に減少したものの、2022年にはまた増加しています。
ドル円は2023年4月2日現在のレート(1ドル=137.8円)で換算
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インドネシア政府、オンラインでの輸入中古衣料品(古着)販売を規制
オンラインでの輸入中古衣料品(古着)販売規制、三つのポイント
インドネシアの協同組合中小企業省とEC企業各社は、それぞれのプラットフォームでの輸入中古衣料品(古着)の販売撲滅を目指すことに合意しました。協同組合中小企業省のHanung Harimba Rachman副長官によると、EC企業との会議では、輸入中古衣料品の撲滅に関連する三つのポイントが示されました。
この会議で合意された三つのポイントは、以下の通りです。
- ECプラットフォームは販売者に法令を遵守するように求めること
- ECプラットフォームは輸入衣料品の出品者をプラットフォームから退場させる警告を出すこと
- ECプラットフォームからの警告があったにも関わらず指示に従わない販売者については、そのアカウントをブラックリストに登録すること
- 参考:Validnews「E-commerce Bakal Take Down Akun Thrifting」
中古衣料品(古着)輸入業者に対する罰則
Hanung氏によると、中古衣料品を輸入した業者には、5年間の刑事制裁と50億ルピア(約4,400万円※)の罰金が科されます。
同氏は、輸入禁止に違反した業者にはきちんと罰則が科されることを望んでいるとしました。その上で、「販売業者が中小企業の場合には罰則の対象とならない、なぜなら彼らの多くが中古品の輸入禁止について知らないからだ。」と説明しています。
ルピア円は2023年4月2日現在のレート(1ルピア=0.0088円)で換算
輸入中古衣料品(古着)販売規制の狙い
協同組合中小企業大臣のTeten Masduki氏によると、政府が輸入中古衣料品(古着)の販売を禁止するのは、国内産業、特に繊維部門を保護したいからであると説明しました。
同氏は多くの国産繊維製品が中小企業から生まれているとし、「もし国内の繊維産業が滅びれば、350万人の新卒者が失業者となる可能性がある。」と付け加えました。
またTeten氏は輸入中古衣料品の販売禁止について、インドネシアが中古品貿易商の国だと見なされることを避けたいという狙いもあると明かしました。同氏は「このままだと私たちは中古品の貿易商にしかなれないだろう。」と懸念を示しています。
1980年から2000年にかけて、インドネシアはファッション製品の輸出に力を入れていました。当時インドネシアはスポーツシューズを全世界に供給しており、そのシェアは世界市場の約20%を占めていました。しかし現在この割合は2%まで低下し、代わりにベトナムが22%を占めています。
インドネシアのファッション業界が停滞している原因の一つは、新品・中古を問わず、輸入品の存在であるとみられています。「このままいけば、アパレルメーカー、繊維工場、地元の中小零細企業を死なせてしまうだろう。」と彼は続けました。
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ECプラットフォーム・ソーシャルコマース大手の反応
インドネシアのECプラットフォームやソーシャルコマースプラットフォーム大手各社は概して、輸入中古衣料品(古着)の販売禁止の原則に従い、取締りに協力する姿勢を見せています。以下ではその例をご紹介します。
Shopee
インドネシア最大級のECプラットフォームShopeeは、輸入中古衣料品販売禁止のルールを順守する用意があることを表明しました。Shopee Indonesiaの広報責任者は、「Shopeeは、輸入中古衣料品を含む輸入中古品の販売禁止に関する政府の規則に従う独自の販売禁止・販売制限品のポリシーを既に持っている。」と述べています。
またShopeeは毎日積極的な監視を続け、プラットフォームのルールに違反する商品を摘発しており、今後も政府と協力していくとしています。
Shopeeと並びインドネシア最大級のECプラットフォームであるTokopediaも同様に、政府の方針に従う姿勢を示しています。
Lazada
同じくECプラットフォーム大手のLazadaは、ECにおける輸入中古衣料品の販売禁止が正式に規定された場合、それを順守するとしました。これは同社の「インドネシアで適用されるすべての規則を守る」という原則を改めて表明したものです。
Lazada Indonesiaの広報担当者は、「インドネシアで事業をする企業として、インドネシアで適用される規則や規制を常に順守する。当社のプラットフォームのセラーには、出店に際してLazadaの規定に従うことを求めている。」と述べています。
TikTok
TikTokはTikTok Shopで中古衣料品を販売するセラーのアカウントを削除することを表明しました。TikTok Indonesiaによると、この方針は中古品販売がインドネシアの中小企業のエコシステム、繊維産業、環境にダメージを与えると考える政府の方針に沿ったものであると述べています。
同社は、「当社の商品掲載ポリシーは、TikTok Shopでの輸入中古品の販売を禁止しており、このポリシーに違反する商品は、当社のプラットフォームから直ちに削除される」としています。
同じSNSプラットフォームでもFacebookは、輸入中古衣料品を販売するアカウントを一時停止したり閉鎖したりはしないとしています。
Meta IndonesiaのカントリーマネージングディレクターPieter Lydian氏は、Facebookのマーケットプレイスはクラシファイド広告に分類されているため、Metaとしてはコンテンツを規制しないと説明しました。
政府による輸入中古衣料品(古着)販売者の救済策
最後に、オンラインでの輸入中古衣料品(古着)販売禁止の影響を受ける販売業者に対する政府の対応についてご紹介します。
インドネシア政府は、輸入中古衣料品の販売業者を厳しく取り締まることで、失業者が出るなど副作用が生じることを懸念しています。
そこで政府は、輸入中古衣料品の販売業者と国内の生産者とを結びつけ、輸入品販売業者が国内製品の販売業者へ転身することを後押しする計画を発表しました。
Teten Masduki協同組合中小企業大臣はジャカルタで行われた記者会見で、「輸入古着を販売していた業者のサプライヤーになりたいと考えているメーカーはすでに12社ある。これらの企業は競争力のある価格の高品質な製品を持っている。」と語りました。
同氏は12社の名前を明らかにしていませんが、「誰でもサプライヤーになることができる」としています。また、近年はローカルブランドがインドネシア人の間で人気となっているため、心配せずに輸入品販売業者からの転身を検討してほしいとしています。
政府は最近、輸入中古衣料品の販売禁止の影響を受けた販売者のためのホットラインを設置しました。ホットラインには、これまでに21件の相談が寄せられているとされます。



各方面から行われる中小企業保護政策
ご紹介した通り、インドネシア政府は輸入中古衣料品(古着)オンライン販売禁止の主な目的について、国内産業、特に中小零細企業の保護だと説明しています。
インドネシアにおいて、中小零細企業は全体の99%以上を占め、国のGDPの61%と雇用機会の97%を創出しているとされています。インドネシア経済のこれからは、中小零細企業にかかっているとも言えるのです。
そのため、政府は中古衣料品の輸入業者に罰則を科す一方で、中小零細企業が多い販売業者の方には支援の手を差し伸べています。今後、政府が意図したような成果が上がっていくのか、繊維産業にどのような影響が出ていくのかが注目されます。
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インドネシアで中古衣料品(古着)の輸入販売ビジネスはできますか。
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インドネシアでは衣料品を含む中古品を販売目的で輸入することは禁止されています。
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インドネシアで中古衣料品(古着)の輸入販売が禁止されているのはなぜですか。
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インドネシアで中古衣料品(古着)の輸入販売が禁止されているのには、主に国内の繊維産業を保護するという狙いがあります。
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インドネシアのECプラットフォームなどを通して日本の中古衣料品(古着)を売れますか。
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インドネシアではオンライン販売を含め中古衣料品(古着)の輸入販売は禁止であり、発覚した場合は商品の削除、販売者としての資格停止などの措置が取られる可能性があります。
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