日本で働く在留資格「技能実習」インドネシア人の特徴(人数、推移、産業分野など)
- 公開
- 2024/11/27
- 更新
- 2025/01/01
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日本で働くインドネシア人技能実習生の数は、年々増加しており、2023年度には技能実習生全体の約21.4%を占めました。
本記事では、インドネシア人技能実習生の人数の推移、主に従事している産業分野、日本企業がインドネシア人を採用する際のプロセスや課題について詳しく解説します。また、技能実習制度と特定技能制度の違いを比較し、制度を利用するインドネシア人からどのように見えているのかについても触れます。
インドネシア人技能実習生の数・推移
インドネシア人技能実習生の数
2023年度の技能実習計画認定件数をみると、技能実習生は全部で35万26件(人)でした。
このうちインドネシアは7万4,879人で、技能実習生全体の21.4%を占めました。12万2,010人で全体の46.3%だったベトナム人に次いで多くなっています。なおすべてのインドネシア人在留者に占める技能実習生の割合は、2023年10月時点で56.2%でした。
技能実習生の出身国別人数のランキングは、特定技能1号における同様のランキングと非常によく似たものになっています。これには技能実習2号または3号から特定技能1号に資格を変更する人が多いことが関係しています。実際に特定技能1号による在留者のうち、元技能実習生は62.9%を占めます。
参考:
外国人技能実習機構「令和5年度業務統計1-5 国籍・地域別 技能実習計画認定件数(構成比)」
厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)別添3「外国人雇用状況」の届出状況表一覧」
インドネシア人技能実習生の数の推移
インドネシア人技能実習生は、人数、割合ともに増えています。2017年から2023年の6年間をみてみると、人数は5,495人から13.6倍になり、7万4,879人に達しました。技能実習生全体に占める割合も、8.6%から21.4%に増えています。
一方のベトナム人技能実習生はこの期間中、人数は5.9倍になりましたが、割合は43.3%から46.3%への微増となっています。
人口9,886万人のベトナムと2億7,750万人のインドネシアではそもそもの母数に3倍近い差があります。技能実習制度は2027年以降、育成就労制度へ移行することが決まっていますが、これらの制度におけるインドネシア人の存在感は、ますます高まっていくと考えられます。
参考:外国人技能実習機構「統計平成29年度―令和5年度国籍・地域別 技能実習計画認定件数(構成比)」
技能実習各産業分野に従事するインドネシア人の人数
インドネシア人技能実習生が多い分野
技能実習生全体の職種別計画認定件数を見ると、多い順に、建設関係(23.6%)、食品製造関係(19.6%)、機械・金属関係(13.1%)、農業関係(7.2%)、繊維・衣服関係(5.8%)などとなっています。
一方、インドネシア人技能実習生については、多い順に、建設関係(36.5%)、機械・金属関係(11.9%)、食品製造関係(11.5%)、農業関係(8.3%)となっています。全体の割合に比べてインドネシア人が多い分野は、建設関係と農業関係、漁業関係(全体0.7%、インドネシア2.0%)です。
インドネシア人技能実習生が少ない分野
全体の割合と比較してインドネシア人が少ない分野は、機械・金属関係(全体13.1%、インドネシア11.9%)、食品製造関係(全体19.6%、インドネシア11.5%)、繊維・衣服関係(全体5.8%、インドネシア1.9%)です。
なお「その他」に分類される職種の中でインドネシア人技能実習生が比較的多いものとしては、溶接、介護、塗装、プラスチック成形があります。いずれも実習生は3,000人前後で、インドネシア人技能実習生全体の0.04%程度となっています。
参考:外国人技能実習機構「統計令和5年度概要P.3-5」
技能実習制度でインドネシア人を採用するプロセス
技能実習制度で日本での就労を希望するインドネシア人には、図のパターン①のように、インドネシア労働省が開催する研修プログラムに参加する選択肢があります。その後、送り出し機関(SO)経由、またはIM Japanのプログラムに参加することで、技能実習生になることができます。
また、パターン②のように、職業訓練機関(LPK)で日本語などを学び、その後送り出し機関に登録して技能実習生になるルートもあります。
個人で勉強するなどして日本語力の基準を満たしている人は、労働省の研修プログラムやLPKなどを経ずに、直接SOに登録することもできます。
一方、技能実習生の受け入れを検討する日本企業は一般的に、日本の監理団体に登録し、技能実習生の紹介や研修、管理などを依頼します。
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インドネシア人にとっての特定技能制度と技能実習制度の違い
専門的な技術や知識があり、特定の分野の就労ビザを取得できる人を除けば、日本での就労を目指すインドネシア人にとって、もっとも現実的なのが特定技能制度や技能実習制度を利用する方法です。
では、インドネシア人たちはどのようにこれら2つの制度を選んでいるのでしょうか。
制度の違い
建前としては制度の目的が異なる2つの制度ですが、多くのインドネシア人にとって、どちらも日本での就労を可能にする制度と認識されています。
そのため、2つの制度を比較したとき、転職や家族の帯同が許可されている(2号の場合)特定技能制度の方が、自由度が高く、よりよいと感じる人が多いようです。
一方で、技能実習制度には、特定の分野での就労経験が不要というポイントがあります。そのため、高校などを卒業し、自国での就労を経験せずに日本で働くことを視野に入れる若者にとっては、技能実習制度の方が選びやすくなっています。
給与の違い
平均的な給与額は、技能実習生よりも特定技能の方が高い傾向があります。特定技能の場合は元技能実習生を含め、その分野についての知識や就労経験がある人が多いためです。このことはインドネシアでも認知されており、「同じ分野なら国内での準備に多少時間がかかっても特定技能で」と考える人が多くなっています。
コストの違い
渡航までにかかるコストについては、特定技能でも技能実習でもあまり変わらず、いくらかかるかは個人の日本語力や就労経験によります。
利用する制度が特定技能でも技能実習でも、日本語の勉強を一から始める場合、多くの人が日本語学校や職業訓練機関(LPK)に通います。さらに、それぞれの制度で送り出し機関や紹介会社にマッチングや渡航支援を依頼することになります。これらの費用は全体で、30万~40万円に上るケースが多くなっています。
特定技能制度や技能実習制度での渡日を目指す人たちの中には、地方の経済力の弱い家庭の出身者も多数います。そのため、費用やアクセス面で特定技能の技能試験を受けづらいなどの問題があり、技能実習制度を選ぶ人もいます。
渡航後のスケジュールの違い
技能実習生は、日本に渡航してから約1か月の法定講習を受ける必要があります。この期間中は生活費などの手当ては支給されるものの、雇用期間前のため給与は受け取れません。
特定技能制度や技能実習制度を使って日本に渡るインドネシア人の多くが、LPKやSOに借金をしたまま母国を出発します。その返済を考えると、講習期間中に給与が発生しないのは負担となるため、早く働き始められる特定技能の方が、経済的なメリットが大きいと考える人もいます。
試験の難度の違い
特定技能制度を利用するには、各分野の技能試験に合格する必要があります。加えて、日本語レベルについても、日本語能力試験(JLPT)のN4レベル以上、もしくは、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic A2)への合格が必須です。
技能実習の場合、技能試験は不要です。日本語についても、介護分野を除き、特に規定はありません。そのため、技能試験に合格することや日本語学習に難があると感じた人や、できるだけ早く働き始めたいという人は、技能実習制度を選びやすくなっています。
技能実習生も日本語力が問われるように
技能実習生は日本語力を問われないと紹介しましたが、実際は、日本語が全く分からない状態では、日本での生活や仕事に様々な困難があることは広く認識されています。
そこで、インドネシア政府はLPKが十分な日本語教育を行えるよう、2022年12月の労働大臣令で、分野別の職業訓練について定める「インドネシア国家職業能力基準(SKKNI)」に、「日本語(2022年第238号)」を追加しました。
この大臣令では、受講者をJLPT N4に合格させるための、統一カリキュラムが策定されています。つまり、利用する制度が技能実習でも特定技能でも、JLPT N4への合格が推奨されており、各LPKもそれに対応しているということです。
なお前述の通り、技能実習生候補者は、SOへの登録は必須ですが、必ずしもLPKに通う必要はありません。独学でJLPT N4に合格した人は、LPKを経ずSOに登録することができるので、出国前の費用を抑えられます。
技能実習制度は今後の動きに注目
インドネシア人技能実習生の数は年々増加し、日本での労働力の重要な一部を担っています。特に建設や農業といった分野での活躍が顕著で、今後もその需要はさらに高まると予測されます。
一方で、制度を利用するインドネシア人にとって技能実習制度は、自由度や給与額などの面で、特定技能制度に見劣りする面もあります。
技能実習制度は2027年から3年の移行期間を経て、育成就労制度に変更されます。どのような点が変更になるのか、注目していきましょう。
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インドネシア人技能実習生は何人いますか。
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2023年度の技能実習計画認定件数をみると、インドネシア人技能実習生は7万4,879件(人)で、技能実習生全体の21.4%を占めました。
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インドネシア人技能実習生はどれくらい増えていますか。
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2017年から2023年の6年間をみてみると、インドネシア人技能実習生の人数は5,495人から13.6倍になり、7万4,879人に達しました。技能実習生全体に占める割合も、8.6%から21.4%に増えています。
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インドネシア人技能実習生はどのような産業分野に従事していますか。
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技能実習生全体の職種別計画認定件数を見ると、多い順に、建設関係(23.6%)、食品製造関係(19.6%)、機械・金属関係(13.1%)、農業関係(7.2%)、繊維・衣服関係(5.8%)などとなっています。
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