インドネシアから人材を受け入れるための育成就労制度の概要

公開
2025/02/05
更新
2025/03/22
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日本における外国人労働者の受け入れ制度は、時代の変化とともに見直されてきました。現在の技能実習制度は、技術移転による国際貢献を目的としながらも、実態として労働力確保の側面が強く、制度の趣旨と実体の乖離や、技能実習生の権利保護の課題が指摘されています。

技能実習制度のこのような課題を解決し、同時に日本の外国人労働者の受け入れシステム全体を改善するため、新たに「育成就労制度」が創設されることになりました。人材育成と人材確保を目的とする本制度では、特定技能制度との連続性を持たせることで、外国人がキャリアアップしやすい仕組み作りが目指されます。

本記事では、インドネシア人材の受け入れにも関係する育成就労制度の概要や技能実習制度との違い、特定技能制度との関係などについて解説します。

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育成就労制度とは

育成就労制度創設の背景と目的

現行の技能実習制度については、制度の目的と運用実態の乖離、技能実習生の権利侵害、監理団体による監理体制の弱さや技能実習生への相談・支援体制の不足など、さまざまな問題点が指摘されてきました。

そんな技能実習制度の代わりに創設されるのが、育成就労制度です。育成就労制度の目的は、人材育成と人材確保です。本制度は、特定技能制度と連続性を持たせることで、外国人が日本でキャリアアップできる分かりやすいシステムを構築するとともに、長期的に安定して人材を確保することを目指しています。

在留資格としては、「育成就労」が新たに設けられます。

育成就労制度と特定技能制度の関係

育成就労から特定技能への接続

特定技能1号に資格変更できるという点では技能実習と同じですが、育成就労制度は明確に「特定技能1号への移行のための在留資格」という位置づけになります。

技術の移転による国際貢献を建前とした制度だった技能実習制度に対し、育成就労制度は人材育成と人材確保を目的として掲げているため、理念上も、人材確保が目的の特定技能と自然に接続するようになります。

在留資格変更には試験合格が必要

現行の特定技能制度では、技能実習2号を良好に修了した者は、特定技能1号への移行に際して、技能試験と日本語試験が免除されます。

しかし育成就労制度では、資格変更にあたって試験は免除されません。ただし、試験に不合格となった場合、最長1年の範囲内で在留の継続が認められ、試験に再挑戦することができます。

育成就労制度と技能実習制度の違い

技能実習制度育成就労制度
制度の目的技術移転による国際貢献人材育成と人材確保
受け入れ可能な職種・作業91職種167作業(2号に移行できるもの)育成就労産業分野(特定産業分野から決定。詳細は未定)
在留期間最長5年最長3年
家族の帯同不可不可
就労期間中の転籍原則不可(やむを得ない事情がある場合のみ可能)本人の意向による転籍が一定の要件下で可能
就労のための日本語力特に規定なし(介護のみN4)N5相当レベル

育成就労制度と技能実習制度は、制度の目的以外にも、さまざまな違いがあります。

就労可能な職種

育成就労産業分野(育成就労制度で受け入れ可能な産業分野)は、特定産業分野(特定技能制度で受け入れ可能な産業分野)のうち、「就労を通じて技能を修得させることが相当なもの」とされています。

技能実習から特定技能1号への資格変更はほとんどの産業分野・職種・作業で可能です。育成就労産業分野も、技能実習や特定技能の産業分野とほぼ同じと考えられますが、産業分野を細分化した「区分」「作業」などの一部で対象外になるものが出てくる可能性があります。詳細は今後決定されます。

人数枠

技能実習制度では、受け入れ機関の常勤職員数に応じて人数枠が決定されています。

育成就労制度では、分野別に受け入れ人数の上限が設定される見込みで、「分野別運用方針において、生産性向上および国内人材確保を行ってもなお不足する人数に基づき分野ごとの受け入れ見込数を設定し、これを受け入れの上限数として運用する」とされています。受け入れ機関別の人数枠も設定される予定ですが、詳細は未定です。

在留期間

育成就労制度を利用する外国人の在留期間は原則3年間で、最長5年間の技能実習制度よりも短くなっています。これは、制度創設時に特定技能制度がまだなかった技能実習制度とは異なり、育成就労制度が特定技能制度への移行を前提としているためと考えられます。

上述の通り、特定技能1号への移行に必要な技能試験・日本語試験に不合格となったまま3年を経過する場合、最長で1年間、在留の継続が認められます。

また、3年に満たなくても要件を満たせば、特定技能1号への移行が認められる見込みです。

家族の帯同

技能実習制度と同じく育成就労制度では、原則として家族の帯同は認められません。特定技能1号も帯同は不可ですが、特定技能2号に進むと可能になります。

就労期間中の転籍

転籍が認められる要件

育成就労制度では技能実習制度と同じく、パワハラなどやむを得ない事情がある場合の転籍が認められます。また、「やむを得ない事情」について労働者保護の観点から範囲が拡大され、手続きも柔軟化されることになっています。

加えて、技能実習制度では認められなかった「外国人本人の意向による転籍」が、一定の条件の下で認められます。

一定の条件とは以下のようなもので、具体的には今後決定される予定です。

  1. 転籍先の育成就労実施者の下で従事する業務が転籍元の育成就労実施者の下で従事していた業務と同一の業務区分であること
  2. 転籍元の育成就労実施者の下で業務に従事していた期間が、育成就労産業分野ごとに1年以上2年以下の範囲内で定められる所定の期間を超えていること
  3. 育成就労外国人の技能及び日本語能力が一定水準以上であること
  4. 転籍先の育成就労実施者が適切と認められる一定の要件に適合していること

転籍支援

育成就労制度では、外国人育成機構が監理支援機関やハローワークと連携して転籍支援を実施します。当分の間、民間の職業紹介事業者の関与は認められない見込みです。

過度の引き抜き防止

転籍前の受け入れ機関が支出した初期費用などに対し、転籍後の受け入れ機関が一部を支払うなど、補償制度が整備される可能性があります。過度の引き抜きを防止するため、その他の仕組みの導入も検討されます。

就労のための条件(日本語力・資格)

求められる日本語力

技能実習制度では、介護分野を除き、日本語力に関する要件はありません。一方、育成就労制度では、就労前に以下のいずれかを満たしていることが求められます。ただし、育成就労産業分野ごとに、より高い水準とすることも可能となる見込みです。

  • 日本語能力A1相当以上の試験(日本語能力試験(JLPT)N5など)の合格
  • 日本語能力A1に相当する認定日本語教育機関等による日本語講習を受講していること

基本的に、特定技能1号ではJLPT N4レベル、特定技能2号ではJLPT N3レベルの日本語力が求められます。そのため育成就労制度では、最初の要件をN5レベルとしつつ、継続的な学習による段階的な日本語能力向上を目指した制度設計が行われる可能性があります。

資格・技能・職歴など

育成就労制度で受け入れられる外国人は、日本での就労が人材育成を兼ねるため、入国時点では各産業分野に関する専門性や技能は求められません。

また、技能実習制度の「職歴要件(日本で従事しようとする業務と同種の業務に従事した経験があること)」や「帰国後の業務従事要件(帰国後、日本で習得した技術を活かせる業務に従事することが予定されていること)」などの要件は廃止されます。


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育成就労制度の関連機関

受け入れ機関

受け入れ機関の要件

育成就労制度の受け入れ機関の要件は技能実習制度のものが引き継がれますが、以下のように、変更点もあります。

  • 受け入れ機関ごとの受け入れ人数枠など育成・支援体制等の要件は適正化して維持
  • 特定技能制度との接続のため、受け入れ対象分野別の協議会への加入などの要件を追加

就労計画の認定

技能実習制度では1~3号の各段階で計画の認定が必要です。一方育成就労制度では、当初から3年間の計画を作成し認定を受けるようになります。

受け入れ形態

外国人の受け入れ形態は技能実習制度と同じく、外国の支店や子会社の社員等を受け入れる「単独型」と、監理支援機関が関与する「監理型」の2つになります。ただし、単独型で受け入れられる外国人の範囲は、以下の通り変更されます。

  • 外国の支店や子会社の社員等を、研修等のために比較的短期間受け入れる場合→在留資格「企業内転勤2号」※新設
  • 外国の支店や子会社の社員等を受け入れる場合で原則3年間の就労を通じた人材育成という育成就労制度の趣旨に沿うもの→「単独型育成就労」
  • 外国の取引先企業の社員等の受け入れ→「監理型育成就労」

送り出し機関

育成就労制度では、日本と協力覚書(MOC)を締結した国から外国人を受け入れます。今後どの国から受け入れできるのかが明らかになっていくことになりますが、インドネシア、ベトナム、フィリピンなど、特定技能制度で送り出し国となっている国とは、比較的スムーズにMOCを締結できると考えられます。

送り出し機関に関しては、手数料が不当に高額にならないルールの導入を目指しています。

監理団体

技能実習制度における監理団体は、育成就労制度では「監理支援機関」と名称が変更されます。マッチング、受け入れ機関に対する監理・指導、育成就労外国人の支援・保護等を行うという業務内容は変わりませんが、監理・支援・保護機能を強化するため、許可の要件が厳格化されます。

技能実習制度で監理団体の許可を得ている団体も、新たに監理支援機関の許可を取らなければ、育成就労制度における監理支援事業を行うことはできません。見直される要件について詳細は今後決定されますが、例えば以下のような内容です。

  • 受け入れ機関と密接な関係を有する役職員の監理への関与を制限する
  • 外部監査人の設置を義務付ける
  • 受け入れ機関数に応じた職員の配置を義務付ける

監督機関

技能実習制度においては、認可法人外国人技能実習機構(OTIT)が「技能実習計画認定申請書」の審査や監理団体・実習実施者への立入検査などを行っています。育成就労制度においては、外国人技能実習機構が外国人育成就労機構に改組され、監督指導機能や支援・保護機能が強化されます。

また外国人育成就労機構は、特定技能外国人への相談援助業務も担うことになっています。

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育成就労制度開始に向けたスケジュール

技能実習制度から育成就労制度への移行時期

育成就労制度と改正後の特定技能制度は、改正法の公布日(2024年6月21日)から起算して3年以内に開始されることになっています。つまり、育成就労制度は、2027年6月21日より前に始まります。具体的な日付は、2025年1月時点では未定です。

施行後は激変緩和措置として、3年間の移行期間が設けられます。そのため2030年頃までは、技能実習制度と育成就労制度が併存することになります。

新たな技能実習生の受け入れと現在在留する技能実習生の扱い

技能実習生の新たな受け入れは、育成就労制度の開始日までに技能実習計画の認定の申請がなされ、原則として施行日から起算して3か月を経過するまでに技能実習を開始するものまでが対象となります。

施行日時点で既に受け入れている技能実習生については、引き続き認定計画に基づいて技能実習を続けることができます。

技能実習1号で在留する技能実習生は、技能実習計画の認定を受けた上で、技能実習2号へも移行することができます。技能実習3号への移行は、育成就労制度開始日時点で技能実習2号で在留している人の一部について許可されます。詳細は今後決定されます。

なお、既に帰国した元技能実習生については、技能実習を行った期間が育成就労を行った期間とみなされます。2年以上の技能実習を行った外国人は育成就労制度で働くことは原則認められませんが、技能実習を行った職種・作業に対応する育成就労の受け入れ対象分野がない場合など、条件を満たす場合には育成就労で働くことが認められる可能性があります。

参考:
出入国在留管理庁
「育成就労制度・特定技能制度Q&A」
「育成就労制度の概要」

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企業も労働者も利用しやすい制度へ

育成就労制度は、技能実習制度の課題を踏まえた新たな枠組みとして設計されます。

本制度では、外国人労働者が日本でのキャリア形成を見据えながら働ける環境が整備されることや、労働者の権利保護が強化されることが期待されます。

人手不足に直面している日本の各産業分野や企業にとっては、多少のシステムの変更や、労働者保護のために求められることは増えるものの、「人材確保」という目的が明確な分、技能実習制度に比べて利用しやすい制度になるかもしれません。

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育成就労制度の目的は何ですか。

育成就労制度は人材育成と人材確保を目的としており、特定技能制度との連続性が重視されています。

育成就労制度はいつ始まりますか。

育成就労制度と改正後の特定技能制度は、改正法の公布日(2024年6月21日)から起算して3年以内に開始されることになっています。つまり、育成就労制度は、2027年6月21日より前に始まります。

育成就労制度による外国人の在留期間は何年ですか。

育成就労の在留資格の在留期間は、最長で3年間です。

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