インドネシアの介護業界の現状と課題(介護制度や社会保障など)
- 公開
- 2024/11/13
- 更新
- 2026/06/20
- この記事は約9分32秒で読めます。
インドネシアで60歳以上と定義される高齢者の割合は、2045年には5人に1人になると予測されています。
ビジネスの話題となると、インドネシアが若い国であることが注目されがちです。一方で、平均寿命が延び、健康な高齢者が増えるなか、介護もホットなテーマとなりつつあります。
そこで本記事では、インドネシアの介護業界の現状について、介護制度や政府が提供する高齢者向け社会保障などを通して紹介します。
インドネシアの高齢化と介護の現状
人口構成と高齢化率
インドネシアでは1998年法律第13号(高齢者福祉法)により、60歳以上の人を「高齢者」と定義しています。
2024年時点のBPS(中央統計庁)のデータによると、インドネシアでは約2,900万人が高齢者で、高齢者比率は約12%となっています。保健省は、この高齢者比率が2045年までに20%に達すると予測しています。
下の図のように、インドネシアの2020年時点の人口ピラミッドは、依然としてピラミッド型です。ただし、高齢化の進展に伴い、人口構成はより高齢層の厚い形に変化していき、2045年頃にはつりがね型に変化すると考えられます。

- 参考:Kementerian Kesehatan「Indonesia Siapkan Lansia Aktif dan Produktif」
家族介護が中心
インドネシアでは、都市部でも二世代や三世代同居が一般的で、多くの高齢者の暮らしは、同居または近隣に住む家族に支えられています。
保健省のレポートによると、介護が必要な人(高齢者や病気の人など)の約80.8%が家族によって介護されており、プロに委ねるケースは非常に稀です。高齢者を施設に預けることは家族としての責任を放棄したと見なされる場合もあり、家族にとって悩みの種でもあります。
一方で、介護サービスを必要とする高齢者は確実に増えています。そのため政府には、介護施設や介護士を増やすことや、多くの人が利用しやすい介護制度を構築することが求められています。
- 参考:
BPS「Statistik Penduduk Lanjut Usia 2023|P.207-220」
Databoks「Mayoritas “Caregiver” Lansia di RI Adalah Keluarga Sendiri」
インフォーマル介護士の育成
これまで介護が家族の仕事と認識されてきたことや、高齢者自身が家族に介護されることを望むケースが多いことに加え、介護施設の数が少なく、また費用を工面できない家庭が多いことも、インドネシアの介護業界の課題です。
そのため、介護施設や介護人材を増やすことと同時に、介護を担う家族のための教育や支援の重要性も指摘されています。
- 参考:Kementerian Sosial「Perawatan Jangka Panjang bagi Lansia Berbasis Keluarga di Indonesia」
-
インドネシアは高齢化が進んでいるのでしょうか?
-
インドネシアは若い国というイメージがありますが、実際には高齢化が着実に進んでいます。BPSの統計によると、高齢者(60歳以上)の割合は2024年時点で約12%となっており、2045年には約20%に達すると予測されています。人口構成もピラミッド型から高齢層の厚い形へと変化していく見込みで、今後は介護や高齢者支援の重要性が高まると考えられています。
-
インドネシアで介護事業を行うにはどのような許可が必要ですか?
-
インドネシアで介護関連事業を行う場合、適切なKBLI(事業コード)の取得が必要です。規制の厳しい分野であるため、事業内容によってはオンラインシステム「OSS」での事業登録だけでは完結せず、追加の許認可が必要となります。
インドネシアの介護業界に関する法律・規則
インドネシアで介護関連事業を行うには
インドネシアで介護関連事業を行う企業は、特定のKBLI(事業コード)を取得する必要があります。
87100:施設内でのケア・健康回復を伴う社会活動
高齢者向けの入所施設のうち、介護や健康回復支援を伴う施設が該当します。介護付き高齢者住宅、療養施設、介護付き休養施設、ケア施設などが含まれます。
【補足】
87100の事業には民間も参入できますが、社会福祉活動は規制が厳しい分野です。通常のOSSによる事業許可だけでは完結せず、社会省や地方政府の規定に基づいた追加の登録や許認可の取得が必要となる点に注意が必要です。
87301 / 87302:高齢者向け入所型の社会活動
高齢者が施設で生活するための支援を行う分類で、部屋・食事・見守り・日常生活支援などを含みます。87100よりも医療・看護色が弱く、標準的なケアまたは軽度の支援を前提とした高齢者住宅・休養施設が中心です。87301は政府運営、87302は民間運営の施設に対応します。
インドネシアでの介護事業は、一般的な事業と比べて許認可や制度面の確認が重要になります。実際の進出にあたっては、事業内容や地域など、個別のケースごとに整理が必要となる場面も少なくありません。
インドネシアでの事業スキームや許認可の進め方について相談したい方は、こちらからお気軽にご相談ください。
介護士に関する規定
インドネシアでは、介護士はperawat lansia(プラワット・ランシア:高齢者看護師)またはcaregiverと呼ばれます。前述の通り、インドネシアには高齢者介護専用の国家資格はありません。
多くの介護士は看護師の課程を修了し、看護師の資格を取得していますが、法律上、看護師の資格を持つことは任意です。看護師であってもなくても、介護のためのトレーニングを受けていれば、介護士として勤務できます。
介護士のトレーニングのため、2019年には、保健省が「高齢者長期介護における介護者のための実践ガイド」を公表しています。
必要な情報が見つからない方は、下記のサイト内検索を活用してください。
インドネシアの主な介護施設とサービス
介護施設(老人ホーム)/ 高齢者住宅
日本の介護施設は複数の種類に細分化されていますが、介護制度がまだ整備途中であるインドネシアにおいては、日本ほど細かく制度化・類型化されていません。
そんなインドネシアにおいて介護施設といえば、panti werdha(パンティ・ウェルダ)またはpanti jompo(パンティ・ジュンポ)と呼ばれる老人ホームが一般的です。身寄りのない高齢者や要支援・要保護の高齢者向けの公的福祉施設としての性格が強いものや、より住宅に近い民間施設など、施設ごとに特徴があります。
インドネシアの老人ホームは、宗教団体や病院が設立した財団、政府、企業など、さまざまな主体が運営しています。
古くからある施設は相部屋が基本ですが、新しい施設は独立した部屋があることが多く、VIPルームを設ける施設もあります。最近は古いイメージを刷新し、他の施設との差別化を図るために、「ナーシングホーム」など別の名称を使う企業・施設も出てきました。
日本の老人ホームと同じで、必要に応じた介護と、1日3食とスナック、体操などのアクティビティを提供している施設もみられます。
高齢者向け集合住宅
高齢者向け集合住宅はrumah lansia(ルマ・ランシア:高齢者の家)、rumah susun lansia / rusun lansia(ルマ・ススン・ランシア:高齢者のアパート)などと呼ばれます。
集合住宅は、高齢者向け施設としてはまだ珍しい形態です。公共事業・公営住宅省は、公的なものでは2015年に建設された東ジャカルタの「Rusun Lansia Sasana Tresna Werdha Karya Bhakti(ルスン・ササナ・トレサナ・ウェルダ・カルヤ・バクティ)」が最初の事例と説明しています。
同施設の部屋にはいくつかの種類(ランク)があり、さらに、介護付きか介護なしを選べるようになっています。
在宅介護サービス
以前は、介護というとほぼ間違いなく家族の仕事でした。しかし現代では、料金を支払う余裕がある家庭が在宅介護サービスを利用することも多くなっています。
介護士は一般的に、病院や介護士派遣会社から派遣・紹介されます。家政婦やベビーシッターを雇うことが一般的なインドネシアでは、通いまたは住み込みで、長時間ケアを担う形態もみられます。
このように、インドネシアでは施設介護だけでなく、在宅ケアや関連サービスへのニーズも広がりつつあります。市場の実態や消費者ニーズを把握することが、事業検討の第一歩となります。
実際にインドネシアへ現地視察に行かれることで、インドネシアの介護業界の実態がより明確になります。弊社の方で現地視察をトータルで支援するサービスをご提供しておりますので、ぜひ気軽にお声掛けください。
「インドネシア進出を前向きに検討しているものの、コンサルティング費用に月額20万〜30万円をかけるのは悩ましい。」そんな企業様にも気軽にご利用いただけるよう、弊社では月額5万円のインドネシア進出支援サービスをご提供しています。
- 定期的なオンライン会議と随時のメール相談を通じて、初めてのインドネシア進出を丁寧にサポートいたします。月1回のオンライン会議に加え、ご不明点やご相談にも迅速に対応いたします。
- インドネシアでの語学学校(LPK)や送り出し機関(SO・P3MI)の設立に向けて、関連する法規制や設立要件、実務上の注意点などを調査し、リサーチ結果を適宜ご報告いたします。
- インドネシアでの送り出し事業の本格的な開始に先立ち、現地の既存LPKやP3MIとの業務提携を円滑に進められるよう、提携候補先の選定やマッチングをサポートいたします。
日本とインドネシアの介護業界のつながり
日本とインドネシアの介護分野のつながりは、主に、インドネシアからの介護人材の派遣という形で続いてきました。
2008年に発効した経済連携協定(EPA)に基づく外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れに始まり、2017年には技能実習制度に介護分野が加わりました。さらに、2019年には特定技能制度が開始しています。
このうち技能実習制度は、日本の技術をインドネシアに持ち帰ってもらうことを目的としています。そのため、インドネシアの事情に着目した実習生の教育が行われるケースもあります。
― ビジネス最前線の声
インドネシアの介護業界に進出した日本企業
インドネシアの「介護分野」に参入した日本企業というと、特定技能人材を育成する職業訓練機関の設立や、大学などの教育機関との提携がメインになっています。
その一方で、インドネシアで介護や関連事業を行う日本企業もあります。
ロングライフホールディング株式会社
インドネシアで介護事業を展開する日本企業の代表例として挙げられるのが、ロングライフホールディング株式会社です。
同社は現地大手デベロッパーのJababeka(ジャバベカ)と合弁会社を設立し、2014年に西ジャワ州チカランで高齢者向け住宅「Khayangan Senior Living」を開業しました。
施設は医療都市ジャバベカ・メディカルシティ内にあり、介護が必要な人もそうでない人も利用できます。また、日本での実務経験のある元看護師や介護士をスタッフとして採用している点も特徴です。
さらに同社は、インドネシアにおける介護福祉士制度の導入支援にも関わっています。日本の介護福祉士資格制度を参考にした制度設計や人材育成に協力しているほか、国際機関や大学と共同で研究調査を実施し、自社のケア技術を現地に移転できる可能性も検討しています。
ライク株式会社
ライク株式会社は、インドネシアで日本式の保育・介護事業の展開を進めている企業です。
2026年には、ジャカルタ西側のBSD Cityで日本式の保育・介護事業を展開するため、現地法人を設立する方針を発表しました。また、西ジャワ州の各地方自治体と連携し、特定技能介護で日本での就業を目指す人材向けの教育プログラムの準備も進めています。
パラマウントベッド株式会社
パラマウントベッド株式会社の現地法人のParamount Bed Indonesiaは、病院や介護の現場で使われるベッドや関連機器を提供しており、インドネシアでも高い信頼を得ています。
介護施設そのものを運営する企業ではありませんが、高齢者ケアや介護現場を支える設備面で存在感のある企業です。
-
インドネシアには日本のような介護保険制度はありますか?
-
インドネシアには、日本のような公的介護保険制度は現時点では存在していません。高齢者介護は主に家族が担うことが一般的であり、制度としては医療保険(JKN)や低所得者向けの社会支援プログラムなどが部分的に高齢者を支えています。そのため、介護サービスの多くは民間や家族に依存しているのが現状です。
政府の介護政策・高齢者向け社会保障制度
インドネシアに介護保険制度はなく、介護士を認定する国家資格もありません。公的な介護施設も少なく、今のところ、高齢者介護は看護の延長線上にあります。
一方、政府は2020年から2024年の国家中期発展計画に「高齢者国家戦略(Stranas Kelanjutusiaan)」を盛り込み、高齢者の貧困率の改善や高齢者の健康でアクティブな生活を実現するための高齢者支援を進めています。
その一環として、高齢者が利用できる公的支援がいくつかあります。
国民健康保障制度(JKN)
インドネシアの国民健康保障制度はJKN、健康保険はBPJS Kesehatanと呼ばれます。BPJSの保険料は毎月加入者自身が納めますが、支払い能力がない人は、政府が代わりに負担することになっています。
2023年3月にBPSが行った調査によると、高齢者のJKN加入率は75.1%に留まっています。政府は国民皆保険を目指していますが、依然として未加入の人や、加入したものの保険料を滞納している人が多いことが、JKNの課題です。
希望の家族プログラム(PKH)
日本語で「希望(の)家族プログラム」などと訳されるProgram Keluarga Harapan (プログラム・クルアルガ・ハラパン、PKH)は、特定の基準に基づき、低所得家庭に提供される社会支援プログラムです。
PKHの受給者として登録された高齢者は毎月、240万ルピア(2万2.360円)の支援を受けます。PKHを受給する高齢者は増えており、PKHの受給世帯は高齢者のいる世帯の15.8%となっています(2023年時点)。
【補足】
円表記は、2026年4月14日のレート(1ルピア=0.0093円)で換算したものです。
高齢者社会復帰支援(ATENSI LU)
高齢者社会復帰プログラムは、主に貧困、孤立、障害、虐待、差別などの問題に直面している高齢者に対し、総合的な支援を提供するためのシステムです。
このプログラムでは、地域の社会復帰センターなどの職員らによるアセスメントを経て、カウンセリング、家族・介護者・高齢者自身への指導、公的支援や支援機関へのアクセス援助、居住できる住居や施設の紹介などを実施しています。
高齢者社会復帰プログラムでは、高齢者に家族がいる場合、その家族への支援や指導を行いますが、いない場合は、近隣住民や地域のリーダーなどを代わりの家族とするはたらきかけも行います。
高齢者向け食事プログラム(Permakanan Lansia)
高齢者向け食事プログラムは、2022年に新たに開始された社会支援プログラムです。対象は経済力の弱い75歳以上の人で、条件を満たすと食事支援を受けられます。
食事支援の受給者には、主食、主菜、副菜、果物、ミネラルウォーターを含む食事が1日2回提供されます。
非現金食料支援(BPNT)/ 生活必需品プログラム(Program Sembako)
インドネシアの貧困家庭向け食糧支援は以前、BPNT(非現金支援)と呼ばれていました。
これが2020年、「生活必需品プログラム」に改められ、受給者への支援額が引き上げられたほか、支援品の幅も拡大しました。
生活必需品プログラムの対象者は高齢者に限りませんが、やはり多くの高齢者世帯が受給しています。2023年には、高齢者のいる世帯の受給率が、22.7%に達しています。
保健所による訪問ケア
県や市が設置するPuskesmas(プスケスマス)と呼ばれる保健所のなかには、高齢者を訪問し、健康状態の確認、介護支援、カウンセリングなどを行ったり、高齢者を集めてイベントを実施したりするところもあります。プスケスマスによるこのような支援は、原則無料で受けられます。
また、地域によっては、非営利団体や病院が、有料・無料の訪問サービスを実施している場合があります。
需要が増えるインドネシアの介護業界
少し前まで、インドネシアの人々にとって、高齢者介護はあまり身近な問題ではありませんでした。医療が整い、健康への意識が高まってきた現在でも平均寿命は男女平均で74.2歳(2024年)であり、70代後半以上の高齢者のイメージを持てない人もいます。
そのため高齢者に対して、「高齢になったら何もできない」「かわいそうな人たち」とネガティブなイメージを持つ人も少なくありません。
日本で介護を学ぶ若者たちは、高齢者の個性や意志を尊重することや、残った能力を引き出すことで、高齢者一人一人の生活の質を上げることなどを学びます。
これから高齢化が進むインドネシアにおいて、人材育成や施設の整備など、介護業界はどんどん盛り上がっていくことでしょう。
インドネシアの介護業界に興味のある企業様は、ぜひお気軽に、弊社カケモチまでお問い合わせください。
必要な情報が見つからない方は、下記のサイト内検索を活用してください。
お客様の声
なんでもご相談ください!
法人設立
雇用代行
現地視察
ビザ申請
















いつでもお気軽にご相談ください
-
WEBからお問い合わせ
ご相談はいつでも無料24時間受付(2営業日以内に返信いたします)
-
すぐにでも日程調整を行いたい
日程調整フォームへ代表の柳沢が説明いたします。















