インドネシアの高齢者向け介護施設や老人ホームの特徴
- 公開
- 2024/11/18
- 更新
- 2026/06/20
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インドネシアの老人ホームはかつて、基本的には「身寄りのないかわいそうな高齢者が入るところ」でした。今でも「介護は家庭で家族がするもの」という認識は根強いものの、介護施設に対するニーズは少しずつ変わってきています。
そこで本記事では、インドネシアの介護施設の現状と展望について、具体例を挙げながらみていきます。
【補足】
本記事の円表記は、2024年11月15日時点のレート(1ルピア=0.0098円)で換算したものです。
インドネシアの介護施設に関する制度の概要
介護施設に関する法的規定
インドネシアには日本のような介護保険制度や要介護度認定制度がなく、介護施設の種類も、法的に細分化された規定はありません。施設を運営する企業が取得する事業ライセンスの区分では、老人ホームなど一般的な介護付き高齢者介護施設と、比較的軽度の介護付き、または介護なしの自立支援型高齢者施設の2種類に分かれています。
運営者としては、インドネシア政府または地方政府、民間企業、財団などが挙げられます。
参考:OSS「Klasifikasi Baku Lapangan Usaha Indonesia (KBLI) 2020」
介護士に関する法的規定
介護士に関しても、国家資格などはありません。一般的には、看護師の資格を取得した人が専門分野として高齢者介護を学び、現場で勤務します。ただし、看護師の資格を持っていない人でも、職業訓練機関や各企業でトレーニングを受ければ、介護士として働くことができます。
インドネシア保健省は2019年、介護士研修向けのガイドラインを発表しましたが、今のところこの冊子を研修に使うかどうかは任意のようです。
参考:Kementerian Kesehatan「Pelatihan Pendampingan Lanjut Usia bagi Caregiver」
インドネシアにおける介護施設のニーズ
介護施設や介護サービスを提供する企業は多いものの、それをまとめる制度のないインドネシアでは、介護に関する統計がほとんどありません。介護という特定の産業分野が設定されておらず、介護士の数も、看護師の数に含まれてしまっているため、正確にはわからない状況です。
要介護者の80.8%が家族による介護を受けているという保健省の2023年のデータからみると、介護施設は必要とされていないようにも思われます。
しかし、経済成長や核家族化などさまざまな要因により、介護をプロに任せたいというニーズは、確実に増えています。実際に、新しい介護施設や、介護士派遣サービスは増えています。
参考:Databoks「Mayoritas “Caregiver” Lansia di RI Adalah Keluarga Sendiri」
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インドネシアの主要な介護施設の種類と例
老人ホーム/高齢者向け住宅
インドネシアで介護施設といえば、老人ホームです。老人ホームは、panti werdha(パンティ・ウェルダ)またはpanti jompo(パンティ・ジョンポ)と呼ばれ、全国に数百軒あるとされています。小規模なものから大規模なものまであり、名称も様々です。
世話をできる家族がいない高齢者が入居するケースが多く、多くの施設が、介護が必要な人も、自立した生活ができる人も受け入れています。その点で、名前は老人ホームですが、日本でいう高齢者向け住宅を兼ねているケースが多くなっています。
かつて老人ホームは、「かわいそうな高齢者が住むところ」という人々の認識に加え、施設内が過密だったり、サービスの質が低かったりと問題が多く、社会的なイメージはあまりよくないものでした。しかし最近は、充実した設備や手厚いサポートを提供する老人ホームも増えています。
古いイメージを刷新し、他の施設との差別化を図るために、「ナーシングホーム」など別の名称を使う企業・施設もあります。
インドネシアの老人ホームのほとんどは、財団や企業が経営する有料老人ホームです。古くからある施設は相部屋が基本ですが、最近は一つ一つの居室が独立した、高齢者住宅型の老人ホームもあります。
日本の介護施設のように、必要に応じた介護や医療、1日3食と軽食、体操などのアクティビティを提供している施設が多くなっています。
政府が運営する老人ホーム
ジャカルタには、州が運営する無料の老人ホームが4軒あり、「Panti Sosial Tresna Werdha(PSTW)」と呼ばれています。キャパシティーは4軒で約1,200人ですが、2019年時点では1,500人以上が入居しています。ジャカルタ特別州社会局によると、入居者は主に、身寄りのない高齢者や路上生活者です。
参考:
BPS「Panti Sosial Loka Bina Karya dan Jenis Binaan di Provinsi DKI Jakarta, 2018-2021」
Kompas.com「Lebih dari 1.500 Lansia Telantar Dirawat di Panti Sosial Milik Pemprov DKI」
財団が経営する老人ホーム
西ジャワ州ブカシのPanti Werdha Misericordia Deiは、障害児や孤児の支援を行ってきたキリスト教系の財団Yayasan Sinar Pelangi(シナル・プランギ財団)が、活動30周年を記念し、2019年に設立しました。2人部屋、4人部屋、6人部屋があり、最大50名が入居できます。
この他にも、いくつかのキリスト教系、イスラム教系の財団が、孤児院と共に老人ホームを運営しています。また、宗教団体を母体としない財団の老人ホームも多数あります。ジャカルタとその周辺で財団が運営する老人ホームの料金は、300~500万ルピア(2万9,350円~4万8,920円)が相場で、ケア内容や部屋のランクに応じて1,000万ルピア(9万7,850円)前後のプランがある老人ホームもあります。
企業が運営する老人ホーム
2015 年創業の247 Wulan Health & Careは、老人ホーム、介護士派遣、デイケアサービスなどを手掛けます。老人ホームの費用は月額で1,250万~2,300万ルピア(12万2,300円~22万5,000円)です。
Senior Living D’Khayanganは、日本のロングライフホールディング株式会社がインドネシアのPT Jababeka Tbkと共に建設した高齢者向け住宅です。この高齢者向け住宅は医療都市ジャバベカ・メディカルシティ内にあり、介護が必要な人も必要でない人も、1日から入居できます。スタッフは日本での実務経験のある元看護師や介護士です。料金は月額2,000万ルピア台(19万5,000円台)からとなっています。
参考:PT Jababeka Tbk「HUNIAN LANSIA: Jababeka Luncurkan D’Khayangan」
似た高齢者向け住宅としては、ジャカルタ郊外の都市ボゴールにある高齢者向け住宅地「Rukun Senior Living」の老人ホームが挙げられます。Rukun Senior Livingには50歳以上を対象とした戸建て住宅、認知症の高齢者向けケア施設、デイケア施設などが整備されています。老人ホームの料金は月額2,000万ルピア(19万5,690円)ほどからで、1日でも利用できます。
高齢者向け賃貸アパート
高齢者向けアパートは、rumah susun lansia(ルマ・ススン・ランシア)または縮めてrusun lansiaと呼ばれます。
高齢者向け施設としてはまだ珍しい形態で、公的なものでは2015年に建設された東ジャカルタの「Rusun Lansia Sasana Tresna Werdha Karya Bhakti」が最初とされています。このアパートは2023年に管理運営が財団に移され、話題となりました。
インドネシア政府は、Rusun Lansia Sasana Tresna Werdha Karya Bhaktiをモデルとする高齢者向け住宅を各地に建設する意向を示しています。
部屋にはいくつかの種類(ランク)があり、さらに、介護つきか介護なしを選べるようになっています。料金は介護なしの場合、400万~800万ルピア(3万9,140円~7万8,280円)で、介護付きは最高で1,200万ルピア(11万7,420円)です。
参考:Indonesia.go.id「Rusun Lansia, Sarana Bersosialisasi di Masa Tua」
デイケア施設
企業が運営するデイケア施設
デイケア施設はインドネシアではまだまだ新しく、多くはありません。
デイケア施設があるのは主に企業が運営する老人ホームや病院です。例えば前述のRukun Senior Livingには、自立した生活ができる高齢者向けシニアクラブや、認知症のある高齢者向けのデイケアプログラムがあります。
また247 Wulan Health & Careも、週2回のデイケアプログラムを実施しています。1回あたりの費用は10万ルピア(980円)です。
参考:
Rukun Senior Living 「Dementia Day Program」
247 Wulan Health & Care「Layanan」
病院が運営するデイケア施設
病院では、ボゴールのBSH病院がデイケアプログラムを行っています。高齢者向けの様々なアクティビティを実施するほか、特別なコースとしてヨガクラスや「リラクゼーション&バランス体験」プログラムを提供しています。半日コースは40万ルピア(3,910円)、1日コースは70万ルピア(6,850円)です。
参考:Rumah Sakit BSH「Senior Day Care」
さらに、インドネシアの国立大学の最高峰として知られるインドネシア大学の附属病院も、2024年から高齢者向けデイケアプログラムを開始しました。参加者は毎週水曜日、高齢者体操や絵画など、様々なアクティビティを体験できます。
参考:Rumah Sakit Universitas Indonesia「Peringati Hari Lanjut Usia: Wali Kota Depok Resmikan Tenteram Senior Care」
このほか、財団が運営するデイケア施設や、老人ホームのデイケアサービスも、わずかながらあります。
グループホーム
グループホームはインドネシアの介護施設としては新しいコンセプトで、適当なインドネシア語の名称はついていません。
例として、前述のRukun Senior Livingが、バンテン州南タンゲランに持つRukun Group Homeがあります。このグループホームは認知症やアルツハイマー病の症状がある高齢者を対象としており、居住することも日帰りで利用することもできます。
参考:Rukun Senior Living「Group Home&Dementia Day Program」
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インドネシアの介護施設のトレンド
介護施設の多様化
インドネシアの高齢者介護施設はこれまで、ほぼ老人ホームのみでした。特に政府や財団が運営する無料および低料金の施設は、主に、頼れる家族がいない高齢者が入居するところでした。
しかし最近は、介護付き高齢者住宅や、グループホーム、デイケア施設なども登場し、経済力がある高齢者や、頼れる家族がいる高齢者も利用するようになってきています。
対象者の細分化
以前の老人ホームは、介護が必要かどうか、認知症があるかどうかに関わらず、さまざまな年齢と症状の高齢者が一緒に利用していました。
最近は自立した生活ができる高齢者向け、認知症のある高齢者向けというように、対象者を細かく分けて、専門的できめ細やかなサービスを提供する施設も出てきています。
― ビジネス最前線の声
変化するインドネシアの介護事情
現状では、インドネシアの介護の担い手は、まだまだ高齢者の家族です。介護をしてもらえない高齢者は「見捨てられた」と感じ、また、周囲もそのようなまなざしを向けやすい風潮が残っています。
2024年5月には、社会問題担当大臣が「老人ホームは海外のモデルであり、インドネシアには適していない」という主旨の発言をし、物議を醸しました。多くの専門家が「時代遅れの認識だ」と批判しましたが、インドネシアの状況を象徴しているといえるでしょう。
とはいえ、社会は変化しています。本記事で紹介した昔ながらの老人ホームの存在と、新しい施設やサービスが登場している現状から、そのことがわかるのではないでしょうか。
インドネシアはこれから高齢化していきます。介護業界も、ますます需要が増していくでしょう。興味をお持ちの企業様は、ぜひお気軽に、弊社カケモチまでお問い合わせください。
参考:CNBC Indonesia「Mensos Risma Sebut Panti Jompo Bukan Budaya Indonesia, Benarkah?」
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