インドネシア財閥のシナルマスとは?主要事業や日本企業との関わりを解説
- 公開
- 2026/10/10
- 更新
- 2026/10/10
- この記事は約9分30秒で読めます。
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インドネシアのシナルマスとはどのような企業ですか?
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シナルマス(Sinar Mas)は、インドネシアを代表する大手企業グループの一つです。ただし、一つの会社がすべての事業を運営しているわけではありません。複数の事業分野があり、それぞれの企業が事業を展開しています。
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シナルマスの主要事業には何がありますか?
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特に規模や海外展開の面で存在感が大きいのが、APP Groupによるパルプ・製紙、Golden Agri-Resources(GAR)によるアグリビジネス、Sinar Mas Landによる不動産・都市開発です。近年は通信、データセンター、AIなどデジタル分野の動きも目立っています。
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シナルマスは日本企業とも協業していますか?
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はい。Sinar Mas Landは三菱商事、双日、パナソニックホームズ、阪急阪神不動産などと不動産・都市開発で協業しています。APP Groupも日本で長年紙製品を販売するなど、日本企業や日本市場との接点が複数あります。
インドネシア企業を調べていると、「Sinar Mas(シナルマス)」の名前を製紙、パーム油、不動産、通信、金融などさまざまな分野で目にします。
シナルマスは、一つの企業ではありません。独立した複数の企業がそれぞれの分野で事業を展開する巨大な企業グループであり、そのグループ共通のブランドの名称です。
本記事では、シナルマスの主要事業と代表的な企業、日本企業との協業・提携事例、最近のデジタル・AI分野などの動きを紹介します。
シナルマスグループとは?

インドネシアを代表する大手企業グループ
シナルマスは、幅広い事業を展開するインドネシア有数のコングロマリットです。一方で、シナルマスという単一企業がすべての事業を運営しているわけではなく、各分野の企業が共通ブランドの下で事業を展開しています。
公式情報では、Sinar Masについて「8つの事業分野で活動する企業のブランド」と説明されています。これによると、現在の主な事業分野は以下の8つです。
- パルプ・製紙
- アグリビジネス・食品
- 金融サービス
- 不動産・都市開発
- 通信・テクノロジー
- エネルギー・インフラ
- ヘルスケア
- 教育
それぞれの事業を担当する企業やその事業内容については、次章で紹介します。
- 参考:Sinar Mas「Sinar Mas Home」
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シナルマスの始まりと現在
シナルマスの創業者は、Eka Tjipta Widjaja(エカ・チプタ・ウィジャヤ)です。
同氏は、子どもの頃家族とともに中国からインドネシアに渡り、1938年にマカッサルで小規模な商売を始めました。これが現在のシナルマスにつながる事業の出発点です。
その後、食用油、製紙、不動産などへ事業を広げ、さらに金融、通信、エネルギーなどへ多角化し、シナルマスグループはインドネシアを代表する企業グループに成長しました。エカ・チプタ氏は2019年に亡くなりましたが、その後もウィジャヤ一族が複数のグループ企業の役員などとして、主要事業に関わっています。
創業家を中心に発展してきたシナルマスは、「インドネシアの大手財閥の一つ」と言えます。ただし、一族が一つの会社を一元的に経営する形ではなく、事業分野ごとに独立性の高い企業が集まる「企業グループ」である点が特徴です。
- 参考:Sinar Mas「Company Philosophy」
シナルマスの主要事業と代表的なグループ企業
シナルマスの8つの事業分野を一覧で確認
| 事業分野 | 主な企業・ブランド | 主な事業 |
|---|---|---|
| パルプ・製紙 | APP Group | パルプ、紙、包装材、ティッシュ |
| アグリビジネス・食品 | Golden Agri-Resources PT SMART Tbk | パーム油、食品原料、オレオケミカル |
| 不動産・都市開発 | Sinar Mas Land | 都市開発、住宅、商業施設、工業団地 |
| 通信・テクノロジー | XLSMART MyRepublic | 携帯通信、固定回線、デジタルサービス |
| 金融サービス | PT Sinar Mas Multiartha Tbk | 銀行、保険、証券 |
| エネルギー・インフラ | PT Dian Swastatika Sentosa Tbk | 発電、石炭、デジタルインフラ |
| ヘルスケア | Eka Hospital | 病院・医療サービス |
| 教育 | Sinar Mas World Academy | 教育、人材育成 |
シナルマスグループには、上記以外にも多くの企業があります。
パルプ・製紙:APP Group
APP Groupは、シナルマスのパルプ・製紙事業を担う企業グループです。原料から製造・加工・販売までを広くカバーする事業構造が特徴で、パルプ、印刷用紙、コピー用紙、ティッシュ、包装材などを生産し、世界各国へ販売しています。
日本では、1997年に伊藤忠商事との合弁事業としてAPP Japanを設立し、製品を供給しています。2025年には、インドネシアから日本向けの紙製品輸出について、2026年度の取引に関する3億2,500万米ドル(1ドル=155円で約504億円)規模のMoUを締結しています。
- APP Group公式Webサイト:https://app.co.id/
- 参考:APP Group「Strengthening Sustainable National Exports: APP Group Signs Five Strategic Trade Agreements at Trade Expo Indonesia 2025」
アグリビジネス・食品:Golden Agri-Resources、SMART
アグリビジネス・食品分野の中心となるのがGolden Agri-Resources Ltd(GAR)です。
GARはシンガポール証券取引所に上場し、インドネシアでは主要子会社のPT Sinar Mas Agro Resources and Technology Tbk(SMART)が事業を展開しています。
シナルマスグループはこの分野でも、農園から加工・製品化までつながる一貫した事業構造を持ちます。例えば、パーム農園、搾油、精製に加え食用油、食品原料、オレオケミカル、バイオディーゼルなども手掛けています。
SMARTやその子会社が生産する脂肪酸、グリセリンなどのオレオケミカル製品、パーム油産業の副産物であるパームヤシ殻(PKS)などは、日本へも輸出されています。
- Golden Agri-Resources公式Webサイト:https://www.goldenagri.com.sg/
- PT SMART Tbk公式Webサイト:https://www.smart-tbk.com/
- 参考:SMART
「Tahun penuh pertumbuhan dan dampak: Kaleidoskop Perusahaan di tahun 2024」
「25 years of experience lies behind Sinar Mas Oleochemical’s one-stop solution to global oleochemical demand」
不動産・都市開発:Sinar Mas Land
Sinar Mas Landは、住宅だけでなく都市、商業施設、オフィス、ホテル、工業団地などを開発しています。
代表的な開発が、ジャカルタの西隣に位置するタンゲランのBSD Cityです。住宅、オフィス、商業、教育、医療、デジタル関連施設などを含む大規模都市として開発されています。
日本企業も多く所在する西ジャワ州ブカシ県チカランにあるKota Deltamas(コタ・デルタマス)も重要です。住宅・商業施設に加えて工業団地Greenland International Industrial Center(GIIC)を持つ総合都市で、双日も開発に参画しています。
- Sinar Mas Land公式Webサイト:https://www.sinarmasland.com/
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通信・テクノロジー:XLSMARTなど
通信・テクノロジー分野では、XLSMARTやMyRepublicなどが事業を展開しています。
XLSMARTは、携帯通信を中心に法人向けデジタルサービスなども手掛ける会社です。2025年にAxiata Group(マレーシア)系のXL Axiataと、シナルマス系のSmartfren、Smart Telecomが統合して誕生しました。
MyRepublicは、住宅・法人向けに光ファイバーを使った固定インターネットを提供しています。同社はシナルマスグループでエネルギー・インフラ事業を展開するPT Dian Swastatika Sentosa Tbk(ディアン・スワスタティカ・セントサ、DSSA)傘下のMoraRepublicが展開する通信ブランドです。
シナルマス関連企業全体で見ると、近年はAI、クラウド、データセンターなどデジタルインフラ分野への投資も進んでいます。
- XLSMART公式Webサイト:https://www.xlsmart.co.id/
- MyRepublic Indonesia公式Webサイト:https://www.myrepublic.co.id/
金融・エネルギー・医療・教育なども幅広く展開
金融サービスではPT Sinar Mas Multiartha Tbk(シナルマス・ムルティアルタ)などが銀行、保険、証券関連事業を展開しています。
エネルギー・インフラでは前述のDSSAが発電、石炭、インフラ事業を展開し、近年はデータセンターなどデジタルインフラにも事業を広げています。
そのほか、医療分野では高度医療にも対応する民間総合病院グループ「Eka Hospital」を運営ています。また、教育分野(Sinar Mas World Academyなど)にも関わっています。
- PT Sinar Mas Multiartha Tbk:https://www.smma.co.id/
- PT Dian Swastatika Sentosa Tbk:https://www.dssa.co.id/
- Eka Hospital:https://www.ekahospital.com/
- Sinar Mas World Academy:https://swa-jkt.com/
【補足】
Sinar Mas World Academyは、Sinar Mas Landが開発するBSD Cityの中核的な教育機関としてウィジャヤ一族の「エカ・チプタ財団」が設立した学校です。インドネシアには他にも、シナルマスや創業者一族の関連団体を通して運営・支援されている教育機関が複数あります。
必要な情報が見つからない方は、下記のサイト内検索を活用してください。
映像でみるシナルマス
BSD Cityの暮らしと都市機能

Sinar Mas Landが開発するBSD Cityでは、住宅やオフィスだけでなく、ランニングやサイクリングを楽しめる緑地・公園、スポーツ施設、飲食店、Eka Hospitalなどの医療施設も整備されています。動画では、健康的な暮らしを支える街の環境に加え、経済特区「D-HUB SEZ」も紹介されています。
【補足】
D-HUB SEZは、BSD City内にある経済特区(SEZ)で、2024年に正式発足しました。医療を中心に、教育、デジタル技術、クリエイティブ産業の4分野を重点領域として、企業や研究・教育機関などの集積を進めています。
APP系企業が取り組む古紙の回収・再利用

APP Group 傘下のPT Indah Kiat Pulp & Paper TbkのSerang(セラン)工場は、学校や地域住民と協力した資源回収に取り組んでいます。動画では、生徒や住民が古紙やプラスチック容器などを分別・回収する様子に加え、集めた古紙を工場で処理し、廃棄物由来燃料(RDF)として再利用する工程を見ることができます。
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日本企業とシナルマスの協業・提携事例
不動産・住宅開発での日本企業との協業
Sinar Mas Landについては、日本企業との協業事例が複数あります。
例えばBSD Cityでは、三菱商事との住宅開発に加え、三菱商事とシンガポールのSurbana Jurongによる合弁会社Mitbanaとの協業で、複合開発「Hiera」を進めています。
また2025年には、阪急阪神不動産との合弁会社PT Sinar Hankyu Hanshin Masを立ち上げ、BSD Cityで住宅開発を開始しました。
一方、Kota Deltamasでは双日が都市開発に参画しているほか、Sinar Mas Landとパナソニックホームズによる住宅開発「SAVASA」も進められています。双日はほかに、大和ハウス工業との協業で日本人駐在員などを対象とするサービスアパートメントを開発しています。
- 参考:
Sinar Mas Land「The Zora BSD City Hadirkan Daikanyama」、「Sinar Mas Land Hadirkan Vireya」
Panasonic Newsroom「Sinar Mas Land and Panasonic Homes Develop SAVASA」
双日「Sojitz and Daiwa House Industry to Begin Recruiting Tenants for via alma – KOTA DELTAMAS -」
デジタル分野での提携事例
デジタル分野では2018年、Sinar Mas Digital Venturesが東南アジアを中心に活動するベンチャーキャピタルのEast Ventures、ヤフージャパンと共同で、東南アジアのスタートアップへの投資を目的とした「EV Growth」を設立しています。
輸送・物流分野での提携事例
シナルマスグループのGAR(アグリビジネス事業)とスウェーデンのStena Bulkによる合弁会社Golden-Agri Stenaが、2018年に日系海運会社Bay Crest Managementと合弁でGSB Tankersを設立しました。
GSB Tankersはケミカルタンカーの運航・商業管理を手掛け、シンガポールを本社に日本やドバイにも拠点を置いています。
【補足】
GARは、自社のパーム油製品の輸出物流を強化するため、Stena Bulkと海運事業に進出しました。その後、Bay Crest Managementも加わり、現在は食用油や化学品などを扱うケミカルタンカー事業を展開しています。
インドネシア企業との取引では、候補先を見つけた後の連絡や調整にも時間がかかります。弊社の月額5万円のインドネシア進出支援サービスでは、現地企業との連絡・調整も日本語でご相談いただけます。
シナルマスの最近の動きと今後注目したい分野
通信・デジタル・AI分野の強化
近年、シナルマスグループでは、通信やAI、データセンターなどへの展開が目立ちます。
前述のとおり、2025年にはSmartfrenなどが統合してXLSMARTが発足。サービスの品質向上、カバーエリアの拡大、デジタルソリューションの強化など、法人向けサービスに注力することを発表しています。
また、シナルマスのエネルギー・インフラ事業を担うDSSAグループでは、傘下企業を通じてAI対応データセンターやエッジデータセンターの開発も進められています。
- 参考:
ANTARA BABEL「CEO Rajeev Sethi Perkenalkan Identitas XLSmart: Bersama, Melaju Tanpa Batas」
DSSA「DSSA Accelerates Growth in Digital Infrastructure and Sustainable Energy」
スマートシティ・都市開発の高度化
Sinar Mas Landでは、不動産開発とデジタル産業を組み合わせる動きも進んでいます。
例えばBSD Cityでは、2026年にAI・ロボティクスの研究・人材育成拠点の設立が発表されました。また、通信・デジタル省が各地に設置するイノベーション拠点(コワーキングスペース・ハブ)である「Garuda Spark Innovation Hub(GSIH)」の中心拠点も開設しています。
- 参考:
Sinar Mas Land「PT BSDE dan PT ASIX Kembangkan Pusat Riset, Akademi AI & Robotik Baru」
Sinar Mas「Perkuat Ekosistem Digital Indonesia, Sinar Mas Dukung Garuda Spark」
エネルギー・環境・サステナビリティへの対応
製紙やパーム油など、シナルマスの主要事業には森林や土地、資源利用と関係の深い分野があります。そのため同グループでは、再生可能エネルギーの利用や廃棄物の再利用、環境保護活動などにも力を入れています。
例えばAPP Groupは、先に動画でも紹介した資源回収・リサイクル事業や、紙の製造過程で出る廃棄物のリサイクル、植林・森林再生活動などを行っています。GARやSMARTは、パーム油のトレーサビリティや持続可能性への対応を進めています。
また、各地の工場では、太陽光発電システムの導入例もあります。
こうした環境対応は、CSRだけでなく、シナルマスグループの各社が事業を継続・拡大するうえで重要なテーマとなっています。
既存の基幹事業も引き続き大きな存在感
AIやデータセンターなど新しい分野が注目される一方、シナルマスの基幹事業は現在もパルプ・製紙、アグリビジネス、不動産などの大規模事業にあります。
最近の動きを見る際も、「デジタル企業へ転換している」と捉えるより、既存の大規模事業を持つ企業群が、その周辺にAI、通信、データセンター、脱炭素などの新しい領域を広げていると考えるほうが実態を理解しやすいでしょう。
シナルマスを理解するには各事業会社を見る
シナルマスは、パルプ・製紙、アグリビジネス、不動産、金融、通信、エネルギー、医療、教育という幅広い分野にまたがる企業グループであり、グループ企業にとって共通のブランドです。
特に主要なグループ企業であるAPP Group、Golden Agri-Resources、Sinar Mas Landなどは大規模な事業を展開し、日本企業との取引・協業事例もあります。
加えて、近年は通信、AI、データセンターなど新たな事業領域も広がっています。既存の主要事業と最近の動きを合わせて見ることで、現在のシナルマスの全体像を把握しやすくなります。
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